SCIフォーラム インタビュー【柴田 朋子】

柴田 朋子(しばた ともこ)

JUNO(ユーノー)代表 キャリアコンサルタント
愛知県在住。1984年大学卒業後、株式会社リクルートに入社。求人情報誌の編集者に。名古屋支社初の産休取得。夫と死別し一人親として2人の娘を育てる中で、女性の生き方、キャリア形成に関心を深める。2000年瀬戸市役所に中途入社。キャリア教育、商業振興、社会起業創出事業などに携わる。2013年、キャリアコンサルタントとして独立。「一人一人が自分らしく自立して生きる」ことを広く支援している。

――柴田さんのこれまでのお仕事や活動をお聞かせください

柴田 現在はキャリアコンサルタントとして活動していますが、働き方というよりは大げさに言うと人生の意思決定のサポート、より良く生きるためのお手伝いというようなことを念頭に活動しています。フィールドとしては企業や行政の研修や、個人の方のご相談をはじめ、女性たち向けのセミナー、お母さんたちの相談などをやっています。

 

企業で働く女性の話を聞いていく中で、『何か息苦しい』というのが原体験

――これまで行政から企業まで、様々なご経験をされてきたと思いますが、現在の活動に繋がる経緯などをお聞かせください。

柴田 私は男女雇用機会均等法が施行する2年前に社会に出ました。当時は『大卒女子が20パーセントもいないぐらいの時代』でしたので、もう四大を出たら就職はできないというような時代にたまたまその進路を選び、公務員にもならず、教員にもならず、民間就職を選びました。とても選択の幅が狭い中で、ちょっとした縁で大手求人誌の会社に入り、そこから働く人としてとても鍛えらました。

その後、当時の名古屋支社として私が初めての出産をする当事者となりました。産休という制度は法律にはあるものの、「産休とは何ですか」と総務もわからない状態でした。ですから、自ら働き方を作り出すという経験をしてきました。

柴田 とはいえ柔軟な職場ではあったので、いろいろなことを後付けで制度をつくって対応してくれました。私はそれでも何とかやっていけたのですが、違う課にいたとても優秀な同期は、上司に「辞めるよね」と言われて辞めざるを得なかったなんてこともありました。

女性のための求人誌をつくるという仕事をしていたので、いろいろな企業さんの女性の話も聞いていく中で、『何か息苦しいなあ』というのが原体験です。

とはいえ、私自身が自分の仕事もうまくいかず、子どもは熱を出す、迷惑をかけまくる、という中で『こんな状態で一人前の仕事ができているのだろうか』というジレンマは常に抱えていましたね。

 

地域を良くするために働いている公務員が元気でないと、地域は良くならないのではないか

 

柴田 もう一つは、学生のキャリア支援のようなことも業務上やっていました。学生は学生で何も世の中のことを知らなくて、とても大きなギャップを持ったまま社会に出てきています。そうすると、そのギャップに負けて辞めてしまう。これはとても無駄だと思いました。

その中から、もう少し学生や子どもたちのキャリアにも触れたい、関わりたいと思ったとき、市役所の職員の求人を見つけ、『市役所の職員になったら地域や教育に関われるかな』と思って転職しました。実際はなかなか関われないのですが(笑)

柴田 市役所に入ってからは、地域には今まで知らなかった世の中の多様な人に出会うようになり、そこで自分の視野や活動が広がり、社会の課題のようなものに触れることが多くなりました。一方同僚たちを見ると、地方公務員は人事異動がとても多く、小刻みに分野が変わります。なかにはその繰り返しで疲弊して、メンタルを病んでいる人が増えていく。一方で世間は公務員を叩く風潮が強い。「地域を良くするために働いている人が元気でないと、地域は良くならないのではないか」と思うようになりました。

その中で、公務員を元気にする方法の一つとしてキャリアの勉強を活かして公務員向けのキャリアデザイン勉強会をスタートさせました。それが発端で、全国いろいろなところに呼んでいただくようになり、それも一つのきっかけとして独立しました。現在は企業、公務員向けの支援と女性向けの支援、そしてキャリア教育もやっているというような流れです。

 

女性が働くことに関して、他地域ではアップデートされている価値観が残っている

――この地域ならではの課題、例えば女性の社長比率が低い地域、女性の起業家が少ないなど、いわゆる女性が働く環境としてはなかなか数字上難しいように見えるのですが、その辺りの認識や課題感のようなものはありますか。

 

柴田 愛知県という土地は経済的に豊かです。職場は製造業が多く雇用がとてもしっかりしていて、それはとても良いことだとは思いますが、それゆえに変われない点も多くあるように思います。愛知県の人はあまり挑戦的なことなどはやらずに、堅実に事業を進めていくからこそ、大きな失敗もしないかわりに変化もしない。だからこそ、それなりの大都市圏でもあるのに「女性は結婚すると家庭優先だよね」というようなことが、まだまだ根強いです。

経済的に恵まれていて、持ち家もあるような豊かな地域で、親の世代の価値観は昭和のままでもあり、そうなると会社のほうも、女性は「昔ながらの補助的位置づけ」というようになってしまって、男性上司もある意味優しく、無理をさせたがらないし、女性の側も少し控えめになっている、という状況が少なくありません。まあ、だからこそそこにおさまりたくない女性たちは東京へ出て行って帰って来ないという問題にもつながるのですが。

柴田 また、地元から離れない人が多いので、家族3代が近いところに住んでいる場合も多いですね。それゆえか、他地域ではアップデートされているいろいろな価値観が、良くも悪くも強固に残っています。

新卒の就活場面で女子学生に「おばあちゃんやお母さんから反対されるから、就職で東京に行けない」というような話も聞きます。「やりたい仕事があるけれども、女の子がそのようなところに行くなんて、と身内の反対が強くて」というような話もあります。

この辺りの、家族の仲の良さや企業がしっかりしているというメリットが、逆に『新しいことを始めたい』『挑戦的なことをしたい』という女性たちへの足かせにもなってしまう、ということもこの地域の特色なのかもしれません。

もっと仕事の少ない地域で、もっと経済的に厳しい状況であれば「出て行くしかない、働くしかない」と考えるでしょう。しかし、恵まれているがゆえにそこで頑張る人にとっては「好きで働いている」とか「そこまで頑張らなくてもいいんじゃないの」という声をかけられるようなことが起こっています。

 

いろいろな場にトライする経験を、男女問わず皆に積ませる。失敗させる余地を持たせる。

――今は産業の大転換が起こっている中で、潜在的な危機感を持っていると思います。でも、実際に行動に移せていないということが多いと思います。個人は多少なりとも危機感があっても、企業として動けていないことが多いように思いますが、これからの時代どうしていくべきだと考えますか。

柴田 各社の社長はみな変革の必要性に気付いていると思います。ただ、安定志向が染みついている中間層など、私も50代ですけれども、50代は何となく逃げきれると思っている節があります。そうすると、若い人たちが新しいことをやりたいと思ったときにも、岩盤が厚過ぎるのかもしれません。しっかりした組織構造の企業が多いので。もっと若い人たちにチャンスを与え、失敗をしてもいい余地を与えるということをしていただきたいなと。


柴田 女性に関して言うと、特に製造業は男性が多いこともあり、例えば管理職に女性を1人、ポンと登用すると孤立してしまいます。一般的に女性管理職が3割を超えると、それが当たり前になります。しかし急に一人だけ登用してしまうと当事者は、女性側からも浮き、男性側からも「特別視」され、必要以上に頑張らなければいけないと考えてしまいます。そうやって頑張り過ぎて、現場の女性から見ると『あのようにはなれない』という逆のロールモデルになるという悪循環が生まれます。そういう意味では、現状の風土のままでいきなり女性を1人だけ登用するというのは少し乱暴なことだなと感じます。もちろんそんなことを物ともせずやれる女性もおりますので、全てよくないということではありません。

ともかく、いろいろな場に挑戦する経験を男女問わず皆に積ませる、失敗を恐れず取り組むという機会がとても重要です。そうやって少しずつ裾野を広げ、自信をつけ、仲間を増やしていくことで、男女問わず多様な人材が活躍でき、この地域の安定性だけでなく変革のエンジンにつながる人材が育って行くことでしょう。

 

リーディングカンパニーが本気を出せば、この地域は変わる

――今回SCIフォーラムに関わっていただくということで、この活動期待すること、あるいはこの活動を通じて何か実現したいことなどありますか。
柴田 愛知県は、何となく縦社会というか、トップダウンだなというのが私の肌感覚としてあります。ですので、リーディングカンパニーが本気を出してくれると、愛知県は変わるな、ととても期待をしています。そうした企業が本気でこの場に社員さんを関わらせていき、『一緒に新しい愛知県をつくっていく、東海地区のムーブメントをつくっていく』というような活動につながるきっかけになるといいなと思っています。

あとは、意外と企業人は企業人としての世界は広いのですが、世の中全体で見ると意外と知らないこともたくさんありますよね。私はその辺の生々しい情報を差し込んでいく存在になれるかなと思っています。

予定調和な、同調的な場ではなく、少々ざわざわしても混ぜていく

――SCIフォーラムは、女性の方にもたくさん関わってほしいと思うのですが、SCIフォーラムとしてできること、やっていった方がいいことは何だと思いますか。

柴田 SCIフォーラムには、出会いやコミュニケーションの場がありますよね。それが大事だと思っています。混ぜる、混ざるを、予定調和や同調的な場ではなく、少々ざわざわしても混ぜていくこと。そうした旗印を持っていたいなと私は思いますが、どうでしょうか?

――確かに、計画どおりきっちりやるというような風潮があるので、境界線も含めて、ソーシャルやビジネスなどの境界線も含めて、境界線が少し分からないというか、どこまで出て行っても分からないようなくらいに、境界線を少しつくらないようなかたちのものをやりたいと思いますよね。

柴田 そうですよね。参画してくださる方たちが、そのようなつもりはなかったのに、うっかり楽しくなってしまって、いろいろやってしまう、というような、そのような柔らかい感じで巻き込まれてほしいと思っています(笑)

(インタビュアー:中島康滋)