SCIフォーラム インタビュー【犬塚 力】

犬塚 力(いぬづか りき)

トヨタファイナンシャルサービス株式会社 常勤監査役。
大阪府大阪市出身。1982年、トヨタ自動車工業株式会社入社。2006年、同社人材開発部部長。2009年、同社人事部部長、総合企画部部長。2011年、同社常務役員調査部統括。2013年、同社常務役員商品・事業企画部統括、第1トヨタ企画部統括。2015年、トヨタファイナンシャルサービス株式会社代表取締役社長。2016年、トヨタ自動車株式会社常務役員販売金融事業本部本部長。2018年より現職。

 

トヨタの中で培われた「CSR」「CSV」の意識

――犬塚さんのこれまでのお仕事や活動をお聞かせください

犬塚 今は、トヨタファイナンシャルサービスで常勤監査役をしています。

これまでは、トヨタ自動車で30数年間働いた後、2015年からトヨタファイナンシャルサービスで約3年間社長を務め、昨年から現職です。
トヨタ自動車時代はいろいろな仕事をしましたが、人事や経営企画などを経験しました。

トヨタ自動車で総合企画部長をしていたとき、CSRも担当することになりましたが、それが初めてCSRを身近に感じた時だと思います。

ただ、私としては、トヨタ自動車という会社で入社以来、学んだこと、教えてもらったことが結果的にはこの活動(SCIフォーラム)に繋がっているのかなと思います。

 

「社会イノベーター公志園」との出会い

――この活動の前身となる「社会イノベーター公志園(社会イノベーターフォーラム)」に関わられたのは、どういうきっかけですか?

犬塚 5、6年ほど前に、「社会イノベーター公志園」という活動を知りました。

関わっていく中で、涙が出るほど感動する話にいくつも出会いましたが、最初に聞いたエピソードが、こういう活動をサポートしていきたいと考えるきっかけになったと思います。

 

――そのエピソードについて、具体的にお聞かせいただけますか?

犬塚 ヤマト運輸さんが、「まごころ宅急便」を始められた際のエピソードです。

ある女性ドライバーが、一人暮らしのおばあさんの家に宅配に行った時のことです。
彼女は、その時、おばあさんの様子がいつもと違うなということに気づきました。
「おばあさん、大丈夫かな?」と思ったのですが、結局、彼女は荷物を置いてそのまま帰ったそうです。
その後、2~3日経って、そのおばあさんが亡くなられた(孤独死をされた)ということが分かりました。
彼女は、「あの時、私がちゃんと動いていれば、ひとりでお亡くなりになることはなかったかもしれない。なぜ、私は、動かなかったのだろう」と、自責の念にかられました。
そして、その思いは、「世の中の孤独死をなくしたい。ヤマト運輸の仕事が、なんとかそういうことに繋がらないだろうか」という情熱に変わりました。
その後、彼女は、何枚も何枚も企画書を書いて、会社を少しずつ動かしていきました。
その思いが実を結び、ひとつの事業を立ち上げることができたというお話です。

 

 

「企業は社会をよくするために存在する」

犬塚 その後、「社会イノベーター公志園」の関係者の方々にお話を伺っていて、ふと自分の会社がこれまで歩んできた歴史を考えるようになりました。
トヨタグループの創業者である豊田佐吉が自動織機を発明した時の話、トヨタ自動車創業者の豊田喜一郎が「日本で自動車産業を興すのだ」と奮闘した話を思い起こしました。
トヨタ自動車で30数年間働いて学んだ一番大切なことは、企業は社会の課題を解決するために存在するのだということです。
世界に先駆けてハイブリッドカー『プリウス』を発売したこと、あるいは、燃料電池車『MIRAI』など、トヨタ自動車の歴史は社会課題の解決そのものだと思います。
そういう思いをもった人や企業を一人でも一社でも多く増やしていきたい、世の中の困り事や課題に正面からぶつかっていく人や企業をサポートしていきたい、それがSCIフォーラムを立ち上げることにつながっていったと思います。

 

「伝え、行動する」ことの大切さ

――企業が行うCSRやCSV、SDGsという言葉だけが飛び交う中で、SCIフォーラムではより具体的な取り組みが必要だと考えられている理由を聞かせてください

犬塚 先ほどのヤマト運輸さんの話をはじめ、社会を少しでも良くしたいという思いで活動されている方の話を聞くたびに、私は心が動きます。

その思いを「伝える」「行動する」ということに繋げていくことが大事だと思っています。

 

――SCIフォーラムの活動に期待することをお聞かせください

犬塚 まずは、「企業が何のために存在するのか?」ということに気づくことがスタートかな、と思います。

私も、若い頃からそのような「気づき」があった訳ではなく、人の話を聞いたり、実際の活動に触れて感動していく中で、「気づき」を得ることができました。そして、それが今日の自分の生き方にも影響を与えています。

まずは、多くの方に「気づき」の機会を与えることができたらなと思います。

そしてその上で、その「気づき」を人に「伝え」、共感の輪を広げる、また自ら行動を始める、そうやって世の中を変えていく人たちが増えていくことを願っています。

 

(インタビュアー:中島康滋)