SCIフォーラム インタビュー【新井 和宏】

新井 和宏(あらい かずひろ)

株式会社eumo 代表取締役
東京理科大学卒。1992年住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)入社。2008年11月、鎌倉投信株式会社を創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍。2018年9月13日株式会社eumoを設立。

上場しているかどうか関係なく、社会に貢献する会社=「良い会社」を、応援したい

――新井さんのこれまでのお仕事や活動をお聞かせください

新井 これまで10年、鎌倉投信という投資信託の会社を通じて、「良い会社」を応援しよう、ということをしてきました。ここでいう「良い会社」とは、上場しているかどうか関係なく、社会に貢献する会社です。

そういった中で、ソーシャルベンチャーを支援するということもやらせていただいていました。鎌倉投信時代に、『ソーシャルベンチャーと上場企業が結びついて、一緒になって活動していく』ということができたらいいなと思い、いろんな工夫をしてきました。

そういった中で少しずつ結果が出てきましたが、我々自身ができたのは、ほんの一部でした。ソーシャルベンチャーの中でも非常に有名な会社だけだったのです。

鎌倉投信という器では、これから生まれる新しいソーシャルベンチャーや、何か社会的なインパクトを出していこうと思っている起業家の方々を支えることが充分にできなかったのです。

ですから、社会性の強い事業から、もうちょっとビジネス寄りの事業も含めて、アーリーステージや起業をするというタイミングの人たちも含めて応援できる仕組みを作りたいと思いeumoを立ち上げた、という経緯があります。

企業がやるべきことは「本業」であり、その先に必ず「地域」「社会」というものが存在している

――『CSRを超えてSDGsという活動をしていこう』という流れになっていますが、企業がどんなことができる事は何がありますか?

新井 SDGsに書かれている17項目を見ていただくと分かると思いますが、多くの事柄は、皆さんの活動・事業の中に入っていることだと思います。

それは、皆さんが直接取引をされる中で、(例えば、水や電気の使用量に関しては分かりやすいと思いますが)間接的に、つまり「自分たちが仕入れを起こす」という中でも、「取引先がどうなっているか」ということにまで関心を持つ、ということです。

私はこれまで、『CSRということも含めて、企業がやるべき行為というのは本業である』とお伝えしています。「本業」の延長線上に、必ず「地域」や「社会」というものが存在しています。
その視野を、直接取引だけではなく間接取引(つまり取引先を通じた取引)を含めて、自分たちの視野を広げていくということが、間違いなく今時代に求められている「社会性」というものだと思っているからです。
必ず、繋がっているはずなので、そこに対してどうアプローチするのか?ということを、考えていただきたいと思っています。

企業とソーシャルベンチャーを結びつけるきっかけに

――企業の中で活動をしていると、企業の業績を上げることや、売り上げを上げることに始終してしまい、社会課題と触れる機会というのは少なくなりがちです。そういったところに直接アプローチをしたり接点を持ったりしていくために、企業としてはどうしていったらいいのでしょうか?

新井 eumoではこれからネットワークをしっかり作り、色々なソーシャルベンチャーとの接点を皆さんと一緒に作っていきたいと思っています。そのきっかけの1つとして、様々な団体がこれから各地に立ち上がっていく、というように思っています。その中で、東海や愛知・名古屋に関してはSCIフォーラムの発起人として関わらせていただくことに、大変期待をしています。愛知・名古屋には本当に大きい企業がたくさんあります。そういった企業と、ソーシャルベンチャー自身を結びつけるきっかけになっていけたらいいなと思っています。

『企業としても消費者としても、社会に向けて活動していく』ということが、非常に重要

――SCIフォーラム2019の開催によせて、メッセージをお願いします。

新井 SDGsも含めて、社会で向かおうとしている方向性というのは、「企業」という一つのコミュニティーの形だけではないのです。「地域」もそうですし、皆さんが例えば「スポーツを楽しむ」という場や集まりもそうです。個人レベルもそうです。

『企業としても消費者としても、社会に向けて活動していく』ということが、非常に重要であると思っています。

ですので、皆さんが企業人として活動している時間は、「その企業で何ができるのか?」ということを考えていただき、そしてそれと同時に、個人として「どうこの社会をより良くしていくか?」という視点も持って、活動していただきたいと思っています。

公私関係なく、社会が豊かになっていくような仕組みづくりを、一緒にできたらいいのかなと思っています。

(インタビュアー:中島幸志)